考え
共感と受容に基づく人間関係へ
昔は不適応というと、当事者に問題がある、当事者が異常という偏見がありました。しかし、フリースクール等の施設の社会的認知が進み、不登校現象が一般化された現在は違います。経験から言っても不登校当事者はきわめて正常です。それどころか、好感の持てる子どもばかりです。
要するにいわゆる「いい子」が多い。いい子でありすぎて、社会的不適応に陥るのではないかと思うくらいです。繊細で感受性が強く、それゆえに人間関係に傷つくことがある。
逆に、当事者に問題があるというより集団の側に歪みがあると思われることもしばしばです。すべての集団がわるいというわけではありませんが、子どもの世界にも新自由主義的風潮が浸透してきていると推測することもできます。
私自身は長年、学習塾に勤務してきましたが、親御さんの心配や不安の表現からそれが読み取れます。たしかに競争原理が強く働くようになっている。
大人の世界でも、競争原理の強化が経済格差をはじめ、様々な格差を生じさせている。それゆえ、ストレスに耐え切れない場合がある。
たとえば、精神病理学的に言っても抑うつは珍しい症状ではありません。
しかし、学校に通っていないことや、働いていないということに罪責感を持つ必要はありません。社会や学校の側が異常であるということの可能性がある以上、そこから一時的に避難することは当然のことです。
必要なのは人間関係の質そのものを変えることです。競争原理を可能な限り弱め、対立を原則とした人間関係から、受容や共感を原則とする人間関係に更新することです。

子どもを受容するということ
社会には条件付きの愛情しかありません。特に近年の新自由主義的風潮が子ども達の世界にも浸透しつつあることを考えると、競争はますます激化していくように思われます。そんな中で、他者からの愛情や承認を得ることは、難しくなっています。だからこそ無条件にあるがままの自分を肯定され、受容されることを児童期に経験することが大事なのです。不登校生に限らず、全ての子ども達が児童期に無条件の他者からの受容を経験することが、将来において、自分という存在の基盤になります。頑張っていても、頑張らないでいても、自分自身を受け入れ、自分という存在を肯定することのできる強さを、この時期に身に付けることは大変重要なことです。ありのままの自分を肯定することは能力や身分にかかわらず、大人になってからの大きな自信になります。
傾聴→共感→受容。カウンセリングの基本姿勢です。
いきなりの勉強の押し付けは有効ではありません。いきなり指示を出すのではなく、まず、御本人の気持ちに寄り添い、一切の価値判断を差し控え、当事者の声に耳を傾けることです。
たしかにご家族にとってお子さんの不登校は平和な日常が壊れてしまうつらい体験です。とはいえ、そこで焦燥感から無理強いして学校に通わせようとしても逆効果です。まずは、家庭内が安心することのできる居場所であることが肝心です。
不登校について
まず、大事なのは心身の健康です。学校に行くことでも、勉強をすることでもありません。多くの場合、学校に行きたがらない子どもは、身体に異変が起こります。朝、学校に行く時間になると、お腹が痛くなる、気が付かないうちに髪の毛が抜けてくる等。頭というより奥深い身体の次元で学校を嫌がっているようです。大人でもそのようなことはあります。ゴミのような意味のない仕事をやらされているにもかかわらず、生活のため、家族のためにやらざるを得なくなり、会社を辞めるに辞められなくなるというように追い詰められるだけ追い詰められている方もいます。
紋切り型ですが、不登校は得てして「怠学」と受け取られかねません。しかし、時として、「命」にかかわるような境遇まで追い詰められていることがあります。危険なのは「痛覚」という人間以外の動物ならば自明な感覚が人間の場合鈍麻してしまい、頭では「学校に行かなくてはいけない」と思いつつも、身体は嫌がっているという分裂がおこってしまうということです。そういう場合、まず身体の反応に耳を傾けることが大切です。
繰り返しますが、「命」よりも大切なものはありません。「逃げる」ということは、時として戦うことよりも勇気を必要とします。休息が必要です。

学校に通っていないという理由だけで、お子様の学びの機会が失われることは残念なことです。
学校に通っていなくても学ぶことの権利はあります。
みどり塾では学習を通じて自信をつけることを目的とし、御本人の意思を尊重した学習指導に取り組んでいます。
必要があれば、一緒に遊んだり、学習以外のレクリエーションも行います。大切なことは教師との信頼関係を結ぶことと自分が他者に受け入れられているという安心感です。不登校のお子様は自分自身を否定的にとらえる傾向が強く、無条件に他者に肯定される経験が必要です。
不登校にも様々な原因があります。
家庭内の事情、親子関係。いじめ、友人との関係、教師との関係に由来する問題。学業不振、御本人自身の固有の問題。身体症状で通学ができなくなる。なんとなく学校に行かない。その他。何が理由であれ、臨機応変に対処させていただきます。
みどり塾では生徒さんが持つ悩みや不安、恐怖心に対して耳を傾け、真正面から向き合える教師をとりそろえています。
ただ、教師を派遣して終わりではなく、継続的な支援をご家族といっしょに問題が解決するまで真剣に取り組んでいきます。
訪問支援は、第三者の介入を意味し、第三者の風を入れることで、問題解決に向けた足がかりとなる可能性を持っています。

信頼関係をつくること
まず、いきなり学習に入るのではなく、遊びや対話をすることによって、信頼関係を作っていきます。この段階では、良い関係性を作ることを重視します。ご本人が対人的に恐怖感や不安を感じている場合、心がひらかれるまでに十分な時間をかけます。信頼関係を損ねたところでは、何を言っても仕方がありません。ただ心を閉ざすだけです。教師自身がご本人の味方であることを理解してもらいます。
この段階を経ると対象が何であれ、意欲というものが育ってきます。たとえば、一緒にゲームをするのもいいいでしょう。教師が外出同行するのもいいでしょう。少しずつ外に関心が向いていくのを繊細に、注意深く支えてあげることです。
まず、笑顔をとりもどすこと。再登校のタイミングを計るのに表情の変化に気づいてください。表情が暗い、こわばりがあるなど、表情の変化はご本人の精神の状態が如実に表れます。カウンセリングの前後で表情にどんな変化があったかを見ておくことはカウンセリングが上手くいったかの指標になります。ご本人は何らかの問題を抱えています。それを上手く表現することができない場合もあります。基本的には傾聴という姿勢をとるのがいいでしょう。「どうして、学校に行かないの!」と怒鳴りつけたいという気持ちもわかるのですが、ご本人は学校に行けない理由があるから行かないのです。だから、そこで怒鳴りつけてしまうのは、二重の苦しみをご本人が受けることになります。自分の言葉が届いたというときひとは楽になります。傾聴ー共感ー受容のパターンを押さえておいてください。
急性期
急性期は混乱状態にあります。そこで学校やフリースクールに行きなさいと無理強いするのは逆効果です。まずは休息させて下さい。引きこもっていても、御本人の内面は動いていると思われます。休息しているうちにエネルギーが溜まってきます。元気が徐々に出てくると、外界に関心が向かい始めます。登校刺激を与えるならば、混乱状態を抜け出して、元気が出てからです。何らかの外部的要因がなければ、御本人は動き出さないということも確かです。ただし、過度の登校刺激は控えて下さい。経験上、あれっと思うようなタイミングで学校復帰することもあったりします。
学校、社会への復帰
学校に戻るかどうかは大変繊細な問題です。ご本人を取り巻く環境要因や心身の状態よって決まってきます。不快であり、苦痛を伴う記憶がフラッシュバックのように想起される状態では学校へ行くことはまだ無理です。何らかの意味での不快な体験があるからこそ、学校に行けないのです。不登校の問題は時として命にかかわることもあります。ありていにいってしまえば、学校に行ったり、勉強をしたりすることよりも「命」の方が大事です。
先にも述べたようにご本人に笑顔が出てきたら社会復帰も近いと思われます。われわれの経験では、生徒さんは学校に復学する、転校する、高卒認定試験から進学する、通信制高校に入学、転入、編入する等、様々な進路を選択しています。道はありますので、お困りの方はぜひ、御相談ください。